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ぴょろりずむ ~本から学ぶ~

読んだ本、読みたい本、読むべき本を紹介していきます。

2020年東京オリンピック開催を控えた今、この小説を読んで考えたい! 「ベイジン(上・下)」(真山仁著)

「ベイジン(上・下)」(真山仁著)を読みました。中国が原発輸出大国となっている現実、東日本大震災における原発事故の問題、2020年の東京オリンピックに向けたインフラ開発等、いろいろなことに、ついつい思いを巡らせてしまいます。

 

北京オリンピック開催(2008年8月8日に開会)にあわせて世界最大の原子力発電所を稼働させようとする中国の国家プロジェクトを巡り、主人公の日本人技術者と中国人党幹部が、それぞれの役割を全うするために苦悩します。立場の違いから衝突しながらも、愚直なまでの使命感やプロフェッショナル魂は、二人に共通するものがあり、お互いを認め、信頼し合い、大きな壁に立ち向かっていきます。

 

さて、主人公の魅力という観点では、日本人技術者(責任者)田嶋伸吾は、様々な問題や障害から決して目を背けることなく、常に真摯に向き合っていきます。また、周囲に足を引っ張る輩が数多く潜んでいる状況下にあっても、冷静かつ適確な判断力と行動力によって、党幹部のみならず、現場作業員らからも、絶大なる信頼を得ていきます。彼の言動や根底にある考え方は、まさにグローバルビジネスの現場で求められているものだと感じました。

 

また、背景に目を向けると、中国の杜撰な技術や安全管理、腐敗した地方役人の姿なども生々しく描かれています。これまでも実際に高速鉄道の事故や食品偽装事件、工場の爆発事故や地盤崩落等、多くの分野で中国固有のレベルでの「人災」が非難されてきましたが、それらの舞台裏を垣間見るかのようなリアルな描写は、中国の社会や政治・経済の暗部を理解する上での一助となります。(元々新聞記者だった著者の綿密な取材力とノンフィクション的な文章力は流石です。)

 

ところで、真山仁氏へのインタビュー記事の中にこんな記載がありましたので、参考までに紹介しておきます。(小説の力について、説得力のあるコメントですね。)

すごくシンプルに言うと、記事やノンフィク ションは事実という檻の中から出られません。もっと厄介なのは、例えばあるひとりから聞 いた話は、裏付けがないと記事にはできない。マスメディアとして責任を持って発行しているところは、どこもそれをやっています。そうすると、話題となって いることの"核心"の話をしたいのに、どうしても周辺の話しか出せないんですよ。さらに言えば、当事者が喋ったからといって、それが本当か嘘かも分かりま せんよね。でも一番知りたいのは、当事者の心の奥にある「なぜそんなことをしたのか」や「なぜそこまで耐えるんだろう」ということじゃないですか。その部 分に関しては小説の方が圧倒的に書ける。~ReaderStoreインタビュー記事より~

最後に、本作品は2008年に発売され、原発とオリンピックをテーマにしていたことから注目され、さらに東日本大震災後に再び脚光を浴びましたが、東京オリンピック開催を控えた今、これまでとは違った読み方も出来るのではないでしょうか。

 

ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)

ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)

 
ベイジン〈下〉 (幻冬舎文庫)

ベイジン〈下〉 (幻冬舎文庫)